佳人と槍











隠さねばならぬほどの、どのような理由があるのかと思えば。


「……!」


月英はに目を奪われていた。

光り輝く、さながら月のような清廉さだ。
思い詰めたような、どこか憂いを帯びた表情でさえ、魅惑的に見える。
この薄幸の佳人は庇護欲を誘うのだ、と月英はを正確に理解した。

実はお願いがあるのだけれど――等と控えめに頼まれたら、それが何であれ喜んで応えてしまいそうだ。

は月英を見つめてから、深々と拝礼する。
月英はの手を取ると、椅子に座らせた。


「筆談にしましょう」


は小声でそっと囁いた。その声ですらゾクゾクする。
月英は言われるがまま、筆を取った。

己の出自。
何度か家のため利用されたこと。
それが嫌で家を飛び出し、山で一人で暮らしていたこと。

負傷した姜維と出会ったこと。

素顔を探ろうとしない姜維を愛していること。

は頬を染めながら、すらすらと筆を走らせる。
月英はそれを読みながら、なるほど、と力強く頷いた。隠した判断も英断であると思える。


「……わかりました。確かに、貴女には仮面が必要です」
「……心より、感謝します」


月英はしばらく考えてから、もう一度筆を取った。
こんな事を聞くのは酷だけれど。

月英は字を書き終えると、に向けて見せた。


「……」
「……」


いつか、貴女を政治的に利用する日が来るかもしれない。
姜維のため、身を汚す覚悟があるか。


「……如何ですか?」


は柔和に微笑む。
笑うとまた印象深く、月英の胸はどきりとした。
華に微笑まれるとは、かくも心乱れるものかと痛感する。

そして筆を取ると躊躇うことなく、『是』と書きこんだ。


「私の全てで、精いっぱいお支えします」


答えると、は仮面をつけようと手を伸ばし――その手を止めた。


「……伯約に、見せた事は一度もないのです」
「……えっ?」
「見せた方が良いでしょうか……何だか、仮面を外すのが恐ろしくて……」


時期を逸してしまったのだ、とは困ったように笑う。


「……そうですね」


難しい、と月英も思う。素直に見せろと言うこともできない。
溺れて職務に支障をきたしそうな気がする。


「少し相談してきます。良いですか? ここでお待ちください」
「はい」


の表情が、ふっと柔らかくなる。
目が釘付けになりそうになりながらも、月英は無理矢理に視線を剥がした。

月英は皆の待つ部屋へ戻ると、諸葛亮の元へと一直線に向かった。


「月英、どうでしたか?」
「孔明様……少々困ったことになりました」


月英が深刻そうな顔で言うものだから、姜維の表情は曇った。


が何か……?」
「いえ、彼女ではなくて貴方のことです」
「……私の??」


何も知らない姜維はきょとんとしている。その様子が少々、腹立たしくもある。


「孔明様、こちらに」
「はい?」


月英は諸葛亮を部屋の外に連れ出した。
誰にも聞かれぬよう、小さな声でやりとりを交わす。


「如何でしたか、月英。姜維が騙されているようであれば……」
「その必要はありませんわ、孔明様」


諸葛亮の心配はそこにあった。
瀕死のところ助けられたとはいえ、めちゃくちゃ怪しい女性を連れてくると言った時は正気を疑った。
実際に対面してやり取りしてみれば、その印象は薄れたものの――二人きりで話したことで、月英が何か感じ取ったかもしれない、と諸葛亮は考えていた。

月英は先ほどのとのやり取りを、諸葛亮に提示した。


「……これは」
「非常に美しい方です。しばらく目を奪われましたもの。あれは……殿方には刺激が強すぎます」


が姜維の妻で良かった、と思う。
もし未婚であったなら、激しい争いが勃発しそうだ。

しかし、安心するのも早計かもしれない。人妻でも良いと、いらぬ諍いが起きやしないか。


「傾国です。彼女を宮仕えさせてはなりませんよ」
「そ、それほどの?」
「ええ。敵対勢力に送り込めば、内部崩壊も狙えるかもしれませんね」


流石に、姜維から新妻を取り上げる訳にはいかないけれど。
月英は難しい顔をした。


「……姜維は、彼女の素顔を見たことがないというのです」
「え」
殿は見せて良いものか、いつ見せればいいかで悩んでる様子」
「……それは、見ても……。……」


諸葛亮は言いかけて、珍しく口を噤んだ。
本当に良いのだろうか。女性の月英ですら、そう言いきるのに。


「……しばらく登城しなくなるかもしれませんよ?」
「……それは困りますね……」


悩ましい。
諸葛亮と月英はしばらく考え込んだが、良い策は出てこなかった。

浮かない顔のまま、とりあえず部屋に戻りましょう、と言い二人とも戻ったものの。


「姜維、慎ましい奥方ではないか。所作も品がある」
「ありがとうございます、殿」


劉備と姜維が、にこやかに談笑している。
を褒められて、姜維は心から嬉しそうだ。


「山に居て仮面が標準装備というから、どんな変わり者かと思ったが」


馬超の率直な物言いに、姜維はあからさまにムッとした。


「確かには変わっていますが、変人では……」
「ああ、悪い。けなすつもりはないのだ。なかなか面白いと思ってな」
「孟起。あまりからかってはいけない。迎えたばかりなのだろう?」
「それもそうか」


穏やかな会話をしているのは良い事だが、それを聞く諸葛亮と月英の胸中は複雑だ。


「姜維」
「はいっ?」
「……」


姜維は素直だ。
はただでさえ他者への影響力があるようだし、彼には刺激が強すぎるかもしれない。

何と言っていいものかわからなくなり、諸葛亮は小さくため息を零した。

そちらは諸葛亮に任せるとして――まず報告を、と月英は劉備の前に進み出た。


殿の仮面の下は、確かに私が確認しました」
「で、俺らには見せられない?」


張飛が「見てみたい」と興味を滲ませながら、口を挟む。
月英はしっかり頷いて否定した。


「はい。その必要はないと判断します。もう一人保障が必要なら……星彩が最適でしょう」
「やはり、男には見られたくないか?」
「はい。姜維にすら見せておりませんから、他の殿方が見るのも妙な話かと」
「なるほど、それは……それもそうだな」


ふむ、と劉備は納得しているが――馬超が、信じられないようなものを見る目で姜維を見た。


「お前……本当に、一度も顔も見ずに?」
「ええ、勿論」


姜維は「それがどうした」と言わんばかりに、あっさりと答える。馬超は不可解そうに続ける。


「何故だ? 見たいと思わなかったのか?」
「思います。しかし、殿の美点はそこではない。顔の美醜など重要ではありません」
「そうか……お前も変わった男だな……」
「失礼ですね」


普通の男なら見たいと思うものだが、と馬超が続け、何人かはその意見に同調している。
姜維は、馬超の絡みをさらりと流しているようだが。


「……姜維」
「はい? 何でしょう」
「あなた……」


物凄い美女ですよ、と月英の口から言うのも憚られた。
そんな事を言おうものなら、かえって他の者からの興味をひいてしまう。だから、別の言葉を。


殿が悩んでいるわ」
「えっ!? な、何をです?」
「あなたが素顔を見たがらないから、いつ見せれば良いのか困っている」
「!」


姜維は目を瞠った。
姜維のことだから、完全に彼女への配慮からだろう。そこには悪意など含みはないし、それが彼女に対しての誠実だと思っているだろうから。

善意だからこそ、も対応に困っている。


「それは……でも」
「女心がわかってないですね、あなたも」


夫に何も期待されないのもまた、悲しいものだと月英は思う。
月英は心底気にはしていなかったが、月英自身も醜いと噂が立っていた。

月英の場合、諸葛亮が見初めてくれたから良かったものの。諸葛亮は噂に惑わされず、ちゃんと月英本人と会って求めてくれた。


(顔を見ないで良いと言い張るのも、優しさとは……)


素直に受け取れない。

は姜維を愛していると言っていた。
ならば、できるだけ好ましく思われたいだろうに。

燻るような思いがして、月英は心を決めた。
勝手に語る男どもを見返してやりたい。鉄は熱いうちに、だ。


「姜維、覚悟なさい」
「え」


月英は、姜維の椅子を蹴り倒した。
不意打ちを喰らった姜維は床へと転がる。

大きな音が立つと同時に、月英は奥の部屋へ声をかけた。


殿、姜維が!」
「!? どうしました!?」
「急に倒れて!」
「えっ!?」


バタバタっと慌てて駆けてくる足音。そして。


「伯約!」


パッと現れたに、皆の視線が集まり――談笑していた男達の動きが、面白いように停止する。
は床に座ったままの姜維に一目散に寄ると、その肩を掴んだ。


「大丈夫!? しっかり……」


姜維は息を呑んだ。
起き上がることもできず、ただを凝視している。


「…………?」
「あ」


はサッと顔色を変えた。
思わず頬に手をやり、自分が仮面をつけていないことに気づいて更に青くなる。

血の気が引いたは、それはそれは美しかった。


「……」
「……」


呆然としたまま、を見つめることしかできない。
は皆の視線を一身に集めたまま、ただ青い顔で俯いている。青を通り越して白い。まずいことをした、とその表情が物語っている。


「……あの……」


が意を決して顔を上げ、おそるおそる姜維に語りかけようとするも――言葉が出てこない。

その間に、月英は奥の部屋から仮面を手にして戻ってきた。


「仮面はここに。さ、つけましょうか」
「申し訳……ございません……」


は心底すまなそうに項垂れているが、謀ったのは月英だ。


「良いのですよ。こちらこそ、騙し討ちみたいな真似をして申し訳ありませんでした」
「いえ……」
「何をおいても夫の元へ駆けつける、妻の鏡ではないですか」


宥めながら、の仮面の紐を結んでやる。

が仮面を装着しても尚、固まっているままの姜維を見て、は内心途方に暮れていた。


「皆まで言わずとも理解したと思いますがね、本当の理由を」
「……伯約……あの」
「あなたが嘘をついた訳ではありません。気になさらぬよう」


やはり見せるべきでは――しかし、いつかは見せねばならない事でもあったし――最初から顔を見せていれば。
無事に顔見せが終わった、と油断していた自分が悪い。
色々な思いが頭を巡り、どうしていいかわからなくなる。

月英は困惑しているの手を引くと、部屋の入口へ誘った。早く彼女を逃がしてやりたかった。


「さ、殿。固まってる殿方は放っておいて、もう屋敷へお戻りなさい。皆、そのうち回復するでしょう」
「はい……皆さま、申し訳ございませんでした……」


失礼します、とか細い声で告げてが退出してからも、皆、しばらく動けずに居た。
思いがけず強すぎる衝撃に、諸葛亮ですら言葉を失っている。

それ見た事か、と一人冷静な月英は冷やかな目で彼らを眺め見た。


「……興味本位で女性の容姿をああだこうだ言うのはよろしくないですね。ねえ、姜維?


ニコリと笑みながら、棘のある言い方で刺す。
名前を呼ばれた姜維は、弾かれたように顔をあげた。信じられない、と言いたげに視線を彷徨わせている。


「あ……あれは」
殿でしょう? あなたの妻の」


妻を強調しながら、月英は冷静に言って聞かせる。
姜維は赤くなったり青くなったり、忙しい。


「利用され、男に嫌気がさしたのだとか。確かに、逃げて隠れなくては危うかったでしょうね。家の為に有力者に献上されてもおかしくはない」
「……」
「わかっているとは思いますが、殿は自分の身を守ろうとしただけです。あなたを騙そうと思っていた訳ではなく」
「……はい、それは……わかって……」


姜維の頭は混乱を極めていた。

確かに、は――顔に問題がある、と答えてはいたが。
姜維が勝手に「見られたくないのなら深い傷があって恥じているのだろう」と消極的な想像をしていただけで。


(あのような……まさか)


己の恥ずかしさと共に、胸がやけに激しく高鳴っている。
彼女の姿が脳裏に焼き付いて離れない。心配そうな目で、姜維だけを見て――。


「連れ出したのは貴方なのですから、しっかりなさい」
「私は……」
「怯んでる場合ですか? 貴方がもし戦死しようものなら、彼女はどうなると思います」
「!」


姜維はいよいよ青くなった。
きっと、ならば路頭に迷う事はないだろう。しかし、それは他の誰かの妻になるということで。

まずい。それはまずい。


「死に物狂いで頑張るしかなくなりましたね?」
「は、はい……!」


負けられない理由が更に増した。他の将の様子を見るに、うかうかしていられない。
姜維は必死に頷いた。














「お帰りなさい」


家では、が待っていた。
緊張している、と雰囲気でわかる。

出迎えてくれて嬉しい気持ちが湧き起こり――同時に、後ろめたいような複雑な思いが芽生える。

姜維はぎこちなく笑って返した。
どう接していいのか、正解がわからない。
帰る道すがらずっと考えて普通に接しようと決めていたのに、いざを目の前にすると頭が真っ白になる。

はそんな姜維を見て、しばらく考えこむ素振りを見せた。


「……あの、伯約」
「はいっ!?」


素っ頓狂な声をあげてしまう。
名を呼ばれるだけで、心臓が飛び出しそうだ。の素顔が脳裏をちらつく。


「……もう一度、私、山へ戻りましょうか?」
「え」
「その……迷惑をかけてしまいましたし……」


ごめんなさい、とは項垂れている。


「……自意識過剰かとも思っていましたが、そうでもなさそうなので……」
「あ、の……」
「……私は、貴方の事が好きです。しかし、今……動揺しているのでは?」


姜維は返答に迷っていた。
の言うとおりめちゃくちゃ動揺しているが、言ってしまえば彼女を傷つける。しかし、否定もできない。


「初めから、やり直しますか?」
「駄目だ!」


姜維は強く言いきった。それだけは絶対に駄目だ。
を今手放せば、もうこの手に戻ってこない予感がする。

慌てての手を握ると、彼女の手は驚くほど冷たかった。


「……すまない、動揺しているのは……その、驚いたからで」


姜維の態度次第では、に見切りをつけられてしまうかもしれない。
そう思うと何を口にするのも怖いが、ここでしっかりしなくては、恐らく――もう二度と巡り合えない。


「あなたと共にいたい気持ちに嘘偽りは無い。このまま……私と一緒に居てくれないか?」


これしか言葉が浮かばない。
は黙りこくっている。握りしめている指が、徐々に体温を戻していくのを感じた。


……」
「……ありがとう。心配しないで、あなた以外の妻にはなりませんから」


やっとの雰囲気が和らいだので、姜維は心から安堵した。良かった。やっと息ができる。
食事の用意をしますね、とは別室へ向かった。

姜維も室内に入ると――倒れこむようにして、椅子へ座った。疲れた。とても疲れた。

を繋ぎとめることには成功した。
となれば、まず考えなければならないことは。


「……屋敷の警戒を強めねば……何か防御策を講じなくては……」


の身が危ない。
皆の眼の色が変わったのを、姜維はしっかり確認していた。
屋敷への来訪も最小限に留めて、極力彼女と接触させてはならない。馬超などもっての外だ。


「お茶を。もうすぐできますから、少し待っ」
。私が居ない時に誰か訪ねてきても、絶対に中へ入れてはいけません。居留守を使ってもいいです」
「え」


茶を置こうとしたの手が止まる。
いきなりそんな事を言われ、戸惑うのも無理は無い。

しかし姜維は至極真面目な顔だったのもあって、は対面に座って話を聞く事にしたようだ。


「でも……不敬って言われるのでは……」


それはまずいのでは、と暗に問われる。
確かに良いことではない。下手をすると出世に響くかもしれない。しかし、姜維は強く首を振った。


「殿だろうが丞相だろうが、誰でも駄目です。男は駄目です。月英殿がいれば可としましょう」
「はい」


姜維の勢いに気圧されたのか、は素直に頷いた。


「護身用に剣を置こう。私がいる時は私が守れますが……となると、やはり月英殿に助力を頼まねば」


あれこれ防衛策を算段する。
死なない程度の罠も必要だろう。
この地も――もう少し離れた場所にするべきだったか――いや、すぐ駆けつけられる距離の方が良かったかもしれない。


「家の防衛費用に、しばらく禄の大半をそちらへ回そうと思う。良いだろうか?」
「大丈夫ですよ、節約は得意なので。良きようになさって」


は事もなげに言う。
ようやく、姜維も肩の力が抜けてきた。


「仮面、しばらくこのままにします」
……しかし、窮屈では?」
「大丈夫ですよ。でも、慣れて下さるよう、時々外してみますね」
「ああ、もちろん」


いつ外すかは秘密にしますね、とは楽しそうに笑う。
その様が可愛らしく思えて、姜維は自然と口を開いていた。


「すまなかった。私が……その、が……私が勝手な想像で決めつけていた」


姜維が謝ると、は小さく首を振った。


「はっきり伝えてなかった私が悪いのです。自意識過剰と思われるのも嫌で……そう思って貰った方が楽だったから、曖昧なことを」
「いや……女性の一人暮らしで、警戒するのは当たり前だ」


あの時。
怪我で朦朧とした意識の中、仮面をつけていないと出会っていたら――どうなっていたか、自分でも想像ができない。
もしかしたら、力で酷く傷つけてしまったかもしれない。

きっと魅せられて抜け出せなくなった姜維を、は受け入れてくれただろうか。
あの状況はお互いに綱渡りだったことに今更気がついて、姜維は恐ろしくなった。


「……大丈夫」


優しく頭を撫でられ、姜維は我に返った。
不安な気持ちを見透かされていたようで、少々恥ずかしい。


「安心して下さいね、あなたが死ぬようなことがあれば私も死にますから」
「そっ、それは、安心できない……」


その気持ちは嬉しいけれど、と姜維は頬を赤くした。
早く身を立てて権力を持ち、彼女ごと蜀を守っていくしかない。

幸い、姜維の手には武器がある。全てを守る為の槍も、その頭も。
長い道のりになるだろうが、鍛えて鍛えて、いつかきっと届くまで。


(しかし……得体のしれない男を助けないように、そのうち注意しなくては……)


彼女を守る槍は、自分だけで良い。他の男など必要ない。
ほの暗い感情が芽生えたのを感じたが、今は蓋をしておこう。
この地に二人が骨を埋められるように、しっかり二人で歩んでいく。

自分の手に残るものは、多くなくて良い。
その中にが入っているならば、それだけでも。


(現金なものだな、我ながら……)


彼女一人で、こんなにも。
曹操があまたの美女を囲い込んでいる気持ちが、少し判る気がした。姜維にはもう、彼女以外は必要ないけれど。

姜維はを抱きしめた。この温かさがあればこそ。


「伯約?」
「もう少し……このままで」


が、なだめるように姜維の背を撫でる。
は、姜維を抱きとめてくれている。あの時と何一つ変わらずに。仮面をつけていようがいまいが彼女は変わらないのだ、と不意に実感が湧いた。

変わらずに彼女は、いま姜維の腕の中に居る。
何故か泣きたくなってきて、姜維は目を閉じた。

――この日以来、姜維は周囲からの猛攻を受ける羽目になったという。






[了]





  






===== あとがき ===

ここでひとまず終わりです。
ヤンデレ要素もじわり発生しつつ(・ω・)

読んで下さってありがとうございました!


 2022.6.11 山藤